戯曲 天野の里の露一人芝居 天野の里の露 劇団滑稽座公演台本 作・吉馴 悠 天野の里の峠から 一人芝居 天野の里の露 (あまののさとのつゆ) 吉馴 悠 1 高野山に真っ赤な夕日が・・・。 僅かの住まいに、小さな庭。 時代は平家が滅亡しての頃。 所は天野の里は高野山への登山口である (葛城山より僅かに東)。 人物は横笛一人。 黒髪は腰の辺りで束ねられてある。 小柄で小さな顔の細面である。 美しいが、どこか哀愁が漂っている。 横笛は二十歳前の女である。 横笛 この地に来て幾度の春を迎えたでしょうか。 昨年の春は遅く桜の花びらもなかなかつぼみを開かず・・・。 梅雨を迎えても長雨が続き、夏は短く、秋は強い風が吹き荒れ、冬は寒さが厳しく・・・。 それだけこの春の桜は一段と美しく感じられまする。 寒さに耐えて咲く冬芽の綻び・・・。綺麗な花を開かせることでしょう。 春霞に煙る高野の山・・・。霞の中にぼんやりと滲んだように広がる 桜の気配・・・。 この数日、花冷えが続いたせいでしょうか・・・。 庭の片隅の梅の木はとっくに咲き花びらを落としていると言うのに・・・。 この地に来たときは、生きづく事が出来るかと・・・。 高野に入られた人を待った多くの女が・・・。この天野の里で・・・。 西行法師様の所縁のかつら様とお娘御が庵を構えておいででした。 待賢門院様の陵が・・・。それは、女院様のゆかりの・・・。西行様 の中納言の尼様のものと思われますが・・・。 時代の終わり、戦が続き何もかも捨てて出家、高野山に入る男が増え、その人を恋い慕いこの天野の里で待った女子が多かったのでしょう。 高野山は女子を受け入れぬところ・・・。ゆえに・・・。この地で・・・。 京からの道のり重たい心を引きずりながら、きつい峠を越えほっとひと時ついて頭を上げたら、山と山に囲まれた里が開け、空には白い綿のような雲が遊んでおりました。山の至る所で桜花が弾けていて新芽の淡い緑の中で鮮やかに咲き乱れておりました。 ここで待とう・・・。そのとき決めたのでございます。 叔母に習って法華寺で髪を下ろし尼の身になっておりました。 ここに庵を結んで・・・。高野山が僅かに見えるこの地で・・・。 許しては貰えないことは承知の上で、少しでも身近に暮らして・・・。 思いは少しでもと言うものでございました。 僅かの土地に小屋を作り、庭に時に食することの出来る菜を植えました。我侭で片隅に一本の梅の樹を・・・。 梅は昔使えていた主が好んでいたものでございましたゆえ。 中納言の尼様が京は西山の小倉の庵を捨て、ここに庵を結ばれたのは西行様がご修行をされた高野に少しでも近づきたいとの思いがあったことは・・・。 この私の想いと同じように思われるのでございますが・・・。 そのように思ってこの里で暮らした多くの女、その彷徨える魂が同じ 思いを持つ女を引き込むのでしょうか。 切ない思い、直向な女心、絶ちがたい性、恨みつらみ・・・。 そんな女の想いが、この地を美しい所として作ったのでしょうか・・・。 目の前に開けた天野の里、天空にたなびく高野への架け橋・・・。 集まった想いがそのように感じさせるのでしょうか。 木々の覆いの下りの坂をゆっくりと天野の里へ、胸いっぱいに空気を吸い込みました。 ここで始まる営みに一抹の不安を感じながら、また、心躍らせながら踏みしめ、遊ぶ雲を眺めたのでございます。 道端には山桜の花びらが風に吹かれて舞っていました.竹林が一瞬大きく揺れざわめきました。 これからの私に起こる何かの予兆だったのでございましょうか・・・。 ことの起こりは・・・。 私は平清盛様のお子、高倉帝の中宮で安徳天皇のお母上建礼門院徳子様に侍女としてお使えしておりました横笛と申すものでございます。 保元の乱、平治の乱を何事もなく終えられた清盛様は天下人・・・。 平和なときの流れが続いておりました。 そんなひと時・・・。 清盛様のお屋敷で盛大な花見の宴が催されました。 建礼門院様もご出席になられ、私はそこで・・・。最後の余興として「春鶯転」を舞うことになっていたのでございます。 その場に出たのがそもそものことの発端でございました。 煌びやかに着飾った平家のご一門の方々、御酒が入り陽気に弾ける宴が続き次々と催しが披露され私の番になったのでございます。 幼い頃より女子の嗜みである歌、鼓、舞は一応習っておりました。 二百数十の瞳が私の一つ一つの動きを追っておりました。 私は見つめられる喜びを感じ、高揚し舞ったのでございます。 殿方の熱い眼差しがどれほどのものか・・・。 身も心も蕩けそうになったのでございます。それが女子の喜びであると知ったのでございます。火照った体にはじっとりと汗が噴出し流れておりました。 十五歳、世間では女になる歳でもありました。 春に咲く桜の花のように私も知らず知らずに咲きかけていたのでございます。花びらは蝶や蜂を誘うもの、そんな自然の営みが私の上に降りかかってまいるのでございます。 東山に更け待ちの月がかかっておりました。月明かりの下で桜は妖艶な姿を見せていたのでございます。それは、男を誘い込む、迷わす、狂わす、腰へ流れる黒髪を一筋口に含んだような姿に見えたのでございます。 その次の日から、三条高倉第の建礼門院様の御所には私宛に恋の文が沢山の人から届くようになったのでございます。 「そんなに沢山の文、読むのに朝を迎えましょうぞ」 同輩の人からからかわれ、頬を赤らめ隠れたのでございます。 文は読まず机の下に隠して何食わぬ顔で侍女の働きをこなしました。 文の主がこの私など相手になさるような人ではなく、ただの遊び相手なのだということが分かっていたのです。 身分が違いすぎました。 あの夜の宴に集った人たちは、天下人のお知り合いであり、支えておいでの人たちだったのでございます。 日夜を問わず殿方の思いの文は届きました。 私とて嬉しくない事はございません。文の封を開けばそこには広がる熱い思いの言葉が書き連ねられ、私の心を浮き立たせることは明らかでございました。だから、開くことに躊躇したのでございます。 女にとって殿方に想われることの幸せを感じないことはございません、が、世間を見渡しまして男と女のあり方に戸惑いを持っていたのも確かでございます。女は心を持たず親の決めた人に身を任す、娘を持った親は身分の高い、財産のある家に嫁がせるそれが時の常でございました。 妻の一家の面倒を見るそれが妻を貰った男のつとめであり、甲斐性のように言われていたのでございます。 本当に私を愛してくれる人、その人と出会い嬰児を産む、そんなゆめを持っていたのでございます。 それゆえ・・・。 文の返事を書くこともなく月日は過ぎてゆきました。 日をすぐるうちに文の数は少なくなり、世間では私の悪口がささやかれ始めたのでございます。 「傲慢な女・・・」 「男嫌い、女好き」 様々ないやみの言葉が飛び交ったのでございます。それは、文を出した殿方の恨みの流言であったのでございます。 「そんなに断っていたらどなたも相手をしてくれなくなりますよ」 心配した局様がそう言葉をくださいます。 恥ずかしそうに笑ってごまかします。 日に日に文は少なくなり最後には一通の文なりました。 やがて来なくなるだろうそう思っていたのでございますが、毎日毎日滞ることなく届いたのでございます。 斉藤時頼様・・・。 斉藤時頼様が・・・。 この殿方が私の人生を変えるのでございます。 桜の季節から紅葉のしぐれ・・・。 都は底冷えのする冬の兆しが感じられるような日々が訪れようとしていたのでございます。 そんな時・・・。 斉藤時頼様には・・・。 突然の出家・・・。 都ではもっぱらその噂で持ちきりでございました。 その噂も私の耳に届きました。 「好いた人と添えぬならば・・・」 「身分が違いすぎる」 私はどうすれば、それほどの思いを投げかけていてくださいましたのかと・・・。文は一通として開けておりません。だけど、私と添い遂げられぬならば出家する。いいえ、往生院にて出家しておられるのでございます。 こんな身分の低い私のために・・・。 お父上と私の板ばさみになられて、お心の優しいお方なのでしょう。お父上に逆らうことも出来ず、思いも断ち切れず・・・。 それほどの想いを抱いてくれて思いのたけを書いたお人を、悪戯な文として扱ったのでございます。 どうすれば・・・。 十五の女の心はちぢに乱れ黒髪をかきむしったのでございます。体は わなわなと震え、庭に飛び出して膝を抱き泣き伏したのでございます。 どれほどの時が流れたのでしょうか・・・。 風花が舞っていたのでございます。 私はすっくと立ち上がり歩き出していました。 裏木戸を開け、都大路をふらふらとしながら往生寺へ向けて・・・。 その往生寺がどこにあることも知らずに、ただ会いたいと言う思いで歩を進めていたのでございます。 私のために世を捨てられて・・・。私のようなもののために・・・。 人の情け、心、の分からぬ女のために・・・。 泣きながらどこともなしに逢魔が時の中へ、京洛を彷徨っていたのでございます。 時頼さま・・・。 心の中で叫んでおりました。 詫びたい、真の心を見せてくださいましたのに、遊びだと、悪戯だと無視した私をただ許していただきたくて・・・。 お会したい・・・。そう思った時に初めて一度もお目にかかったこと のないことに気づいたのでございます。 戴いた文を開けずお心も読み砕いていないことに愕然と身を砕いたのでございます。 呆然と夜の空を見上げました。双眸から止め処となく涙が流れ頬を濡らし単衣の色を変えておりました。 眼に映る潤んだ夜の気配はすっかりと暗闇に閉ざされ、ところどころに僅かな灯が零れているだけでございました。 星の瞬きは垂れ込めた雲にさえぎられているのでしょうか・・・。 単衣の肌には大氣がひんやりとしみこんできていたのです。火照った体にはそれは気持ちのいい感じではございました。が・・・。 気が付いたときには、意識もはっきりとこれからの道のりを考えることが出来る理性が蘇っておりました。 それにしても・・・。 文のよる心の様も、お顔も知らぬお方にこれほどまでに心を動かせる 事を、天命のように感じたのでございます。 訪ね訪ねて漸く往生寺門の前に辿り着いたのは東山の頂がぼんやりと空けていく頃でございました。 門を叩き案内を乞うのですが、なかなか門は開かれず・・・。 「斉藤時頼様にお取次ぎくださいませ。私は建礼門様に使えしております横笛と申すものでございます」 しばらくして、 「滝口殿はその様な者は知らぬと申しておられる。このような朝の訪れも近い頃、早う帰られ・・・」 門の中からそのようなご返事が・・・。 「一度お目にかかり、私の不人情をお詫びしたくて参りました、どう ぞおとりなしを・・・。」 それからは何の返事もなく、しじまが漂っておりました。 どれほどの時をその場に置いていたでしょうか・・・。 これも、不実の行いをした罪の報い、総てが私に非があるのだと言い聞かせても、心の中はまるで風の吹く思いでございました。 胸が苦しくなり、こみ上げてくる嗚咽にただただ任せていたのでございます。 お会いしたい、一目でも・・・。 これが人を恋うるということなのでございましょうか。 この苦しみが・・・。この苦しみと同じ苦しみを時頼様に味合わせた のでございます。 そう思っていてもたっても居られずに門に向かって・・・。 門に縋りつきながら泣き叫んでいたのでございます。 下女が来るまで・・・。探し探して・・・。 帰りましても気もそぞろ何も手につかずに、ボーとして暮らしておりました。 「病気になりますょ」 と、局様が声をかけてくださいます。 すっかり京の山々は赤く燃えておりました。命を終える前、枯れる前 に緑を落とし色を変え、風の悪戯に身を任せ舞って終えるのでございます。 一塵の風が京の町に吹き、枝の葉を落として、風花の舞う季節になるのでございます。 季節のめぐりも私には感じられませんでした。 私の心の中には想いが満ち溢れ十五の体が震えていたのでございます。 それは不実への懺悔であり、時頼様の人生を変えてしまったという私のおろかな行いへの後悔でございました。 終日部屋に閉じこもり何もせず、ただ時頼様の文をいっぱいに並べて見入っていたのでございます。 「横笛、何でも滝口様は京を離れて高野山へ入られるそうな」 「京にいては横笛のことを思い出して御仏の修行に身が入らぬということのようですょ」 「そなたも何と罪なお人じゃな・・・」 様々な言葉が耳に入ってまいります。 「横笛、そなたはどうするのです。このままではそなたは悪者になりますょ。一人の殿方を弄んだと巷ではもっぱらの噂・・・。さて、さて、どうすればいいでしょう。・・・何か好い手立てはないものでしょうかね」 その一つ一つの言葉に身を切られる思いでございました。 私さえこの世にいなければ・・・。 そのように思う日々が続きましてございます。 食べ物ものどを通らず、水さえ受け付けられず・・・。 身を斬るような京の冷たさの中でわなわなと震え、まるで牢獄に繋がれた人のように絶望に苛まれたのでございます。 この寒さの中じっと身を縮めて春を待つ冬芽がなぜかうらやましゅうございました。春なれば枝葉を広げ背いっぱいの伸びが出来ることへの羨望でございました。冷たければ冷たいほど美しい花を咲かす、それが冬芽というものなのでございます。 私の春は・・・。 手桶に水を張り、手首を浸し、刃物で切ったのでございます。 意識はだんだんと遠のいてゆきます。 朦朧とした思いの中で、一人の公達が通り過ぎていきます。 「時頼様」「ときよりさま」と幾ら叫でもその方は振り返ってもくれません。どんどんと行ってしまわれます。 「よこぶえ」と言って欲しい・・・。そして、許してやると言って欲しい・・・。 「横笛なんということを・・・。それほどまでに・・・。」 私は助けられ横たわる傍で、恐れ多いことに建礼門院様のお声を聞いたのでございます。 十二単の鮮やかな組み合わせが目に入ってまいりました。そのお姿は観音様のように見えたのでございます。 「横笛、お前が行ったことが罪と思うならば、仏の道に入り償うといい・・・。想い人とおなじ仏の道へ・・・。」 お優しいお声が暗がりに一条の明かりのように下りてきたのでございます。 叔母を頼って「法華寺」で髪を下ろしました。 「黒い衣を着けるのは色に迷わぬことですよ。女子の黒髪を下ろすのは女子の命を捨てることなのですよ。 今まで多くの女子が髪を下ろしました、が、女の命まで捨てることが出来なかった女子は多かったのですよ。女の性とは何と強欲なものなのでしょうね。 御仏に縋るのですよ、ただ御仏に・・・」 叔母の尼はそのように言って戒めてくださいました。 尼としての毎日、日の巡り、そんな日々の中でもお会いしたことのない時頼様の面影は離れることはありませんでございました。 煩悩・・・。絶ちがたい想い・・・。御仏への祈り・・・。その相克の中で我が身の想いと性に苦しんだのでございます。 御仏に縋れば縋るほど、時頼様への想いは深く重くなっていったのでございます。 なんと言う悪戯でございましょうか・・・。 時頼様のお傍へ、よりお傍へ・・・。そんな想いが終日駆け巡り日に日に高まって行ったのでございます。 我が身をもてあますほど身を焦がしたのでございます。 寒椿が音を立てて落ち、梅の花が蕾を付ける頃・・・。 僅かな荷物を背負い京を落ちたのでございます。 何もかも捨てて・・・。 伏見から宇治を過ぎて奈良へ・・・。そして、天野の里へ・・・。 背荷物の中には、時頼様の文がいっぱい入っておりました。この文はお傍に行ってから読もうと決めていたのでございます。 2 春霞が天野の里に満ち溢れております。この世の全てのものを包み込んでいるようでございます。胸に沁みこんで来る白い空気を一杯に吸い込みました。 この霞はあの時頼様の高野へも繋がっている。そう思うとなぜか心が安らぐので御座います。 「横笛」と言って霞の中にぼんやりと一人の僧が現われじっと私を見つめていてくださるのです。 「時頼様」小さく声を落とします。 この心の張り裂けんばかりの高鳴りは・・・。 このときに女であることを感じるので御座います。墨衣を全て取り除いて飛び込んで行きたい、そんな衝動に駆られるのでございます。膝座間付き両の手を胸の前に合わせるので御座います。 朝の霞の中でのこのひと時がこの天野の里へ来て持つことの出来た幸せなので御座います。 妄想・・・。いいえ現実なのです。 今ではしっかりと時頼様のお顔を覚えておりますもの。お声も・・・。凛々しいお姿も・・・。 私の中ではっきりと捉えることが出来るのでございます。 空の色が変わっていくと霞は潮が引くように消えていきました。 一人庭に伏す私の姿が、まるで露が明かりに奪われるように、思いも消えてなくなってしまうので御座います。 深い緑の空がだんだんと薄い緑に変わり黄色に移り青に目覚める、そんな自然の生業を恨めしく眺めながら、簡単な仏壇に向かって朝のお勤めをいたすので御座います。 時頼様の恙無きご無事をただ祈るので御座います。 それが終わりますと、朝餉の用意をいたし、漬物と粥を戴くのでございます。 霞の中の逢瀬・・・。心でそう思う事も御仏にはお許しくださいますでしょうか。 仏の使いが何と不貞を・・・。心を男に奪われて・・・。それは私とて苦しみの中に身を置き悩んだので御座いますが、私がここ、天野の里へ参ったのも時頼様の少しでもお傍へという思いで御座いましたので、思いを振り払い、御仏の怒りを覚悟で生きておるのでございます。 朝餉を済まし、時頼様から戴いた文を読むのが楽しみなのでございます。 ここに来たときから、私は尼ではなく女になっているのでございます。 その文に心躍らせて頬を赤らめ、体を熱くしているので御座います。 読んで覚えた文を水に戻し、償いのために御仏の人形を創っているのでございます。埒もない女の浅知恵笑ってくださいませ。 桜はどうしてお日様に顔を向けないで・・・。私とて、顔向けできません。 風の悪戯で桜の花びらは弄ばれて一枚一枚と舞って降りかかってまいります。僅かの庭には花びらが・・・。それを踏むのがかわいそうで・・・。じっと部屋で見ているので御座います。 陽気にうとうとと転寝の中へ・・・。 そんな日々の中・・・。 ある夜、盗賊が・・・。 何もかも奪われて・・・。 生きる望みもなくなりました。 時頼様の心を見もせず、確かめもせず・・・。 生きる道を変えたこの私をお許しくださいませ。 もう、会えませぬ、生きては居られませぬ。 時頼様に綺麗な体で・・・。 お会いしとう御座いました。 桜の花びらの中で・・・。 「時頼様」 「ときよりさま・・・」 赤の明かりの中に蹲る横笛。 幕が静かに下りる。 「恋塚」が横笛の悲しい、一途な恋を菩提して立っている。 天野の里の露と散った横笛のことは、明治の文豪高山樗牛によって「滝口入道」として書かれた。 今でも、天野の里を訪れる人は多い。 2004/6/18 一稿を脱稿。ヨシナレ ユウ |